sugar’s diary

主に食べてばかりの日々と旅の記録

ヨーロッパ旅行10日目 ドイツ編③ケルンからミュンスターに移動

ホームには出発時刻の30分前に着きました。ドイツの主要駅は、日本のように東海道新幹線は⚪️番線、上越新幹線は✖️番線と分かれているわけではなく、行き先の違う列車が同じホームをシェアしています。周辺諸国への国際列車も多く、乗る列車を間違えると全然違うところに連れて行かれる可能性があるので、用心深い私は早め早めの行動を心がけました。

ホームで電光掲示板を見ると、1時間前に出発しているはずの列車が表示されていました。ホームを間違えたかもと焦ってその辺にいた人に聞くと、雪の影響で全体的に遅れているとのこと。念のため、駅員さんにも聞くと「あなたの乗る列車は今のところ35分遅れでこちらに向かっています。何時に着くか、また館内アナウンスします」と言われたので、寒いホームにいても仕方ないので一旦駅ナカに引き返しました。

f:id:sugar0809:20160602171511j:plain

スタバの前でwifiを拝借して、ミュンスターで会う予定の男性に列車が遅れることを連絡をしました。男性は男性でも、恋仲ではなく、師弟仲です。今回の旅行で、なぜそんなにメジャーな都市じゃないミュンスターに行くことにしたかというと、大学時代のゼミの先生がミュンスター大学に研修生として留学中だったからです。この日は駅まで迎えに来てくれることになっていました。至れり尽くせりです。

列車を待っている間、暇つぶしに売店をうろうろ。日清のカップヌードルはどこにでもありますね。でも、なんかぼそぼそして美味しくないんだなあ。やっぱりメイドインジャパンカップヌードルが一番です。

f:id:sugar0809:20160911044725j:plain

うろうろするのにも飽き、その辺のベンチに座って休みました。館内アナウンスがひっきりなしに流れていて、どこ行きは何分遅れで何時出発予定、どこ行きは定刻通りだけどホームが変更しただなんだと言っています。私が乗る列車の時刻もアナウンスしてくれたので、列車が着く15分前にホームに行きました。

ホームに着くとびっくりするくらいの人でごった返していました。クリスマス休暇前の金曜日の夜だったので、学校や会社が終わって帰省する人たちなのでしょう。しばらくすると、ホームに列車が入ってきました。あの列車かな?と思いましたが、電光掲示板の表示は違うしアナウンスもドイツ語だけで何言ってるかわからないし、周りの人や駅員さんに何度も確認して発車ギリギリで滑り込みセーフ。だいぶ危機一髪でした。列車を間違えたら大変なので、要心しすぎて損はないと思っていましたが、この時は要心が過ぎたかもしれません。

それでも列車には間に合ったし、席も予約してあるし、万事万端手落ちなし!と言い聞かせて悠々と通路を歩いて行くと、私の予約した席のある車両のデッキに乗客がすし詰め状態になっており、それ以上進めなくなってしまいました。なんとかデッキの隅にスーツケースを押し込んで自分のスペースを確保し、私の前にいた大学生と思しき青年に「なんで進まないの?何かあったの?」と聞くと、苦笑しながら「人が多すぎて中に入れないみたい」とのこと。いやいや、中に入れないとかないでしょ、予約席なんだから!と思い、「私、席予約してるんだけど」と言うと「僕もだよ」と小首を傾げながら、やれやれHaha!的な、余裕すら感じる表情を見せるではありませんか!

え、これがドイツのスタンダードなの?追加料金を払って席を予約してるのに混んでたら諦めるの??ドイツ人、なんて心が広いんだ......。結構なカルチャーショックを受けつつ、しかし郷に入ったら郷に従えです。私よりも10歳くらい若いであろうこの青年があまりにも達観している様子だったので、一瞬でもイラッとしてしまった自分がものすごく小さい人間に思えてきて反省しました。このデッキで約2時間立ちっぱなしは正直辛いけど、このドイツルールを受け入れることで、なんとなく、デッキにいる人たちとの同盟感というか、支え合う精神みたいなものが芽生え始めてきました。そうやって思考を変えてあたりを見渡すと、若い女の子がニコッと微笑みかけてくれました。大変だけど、お互いがんばりましょうね!と励ましてくれてるんだなと理解。これも一人旅の醍醐味、貴重な経験と思ってみんなと一緒にがんばるよ!という気持ちを込めて私も微笑み返しました。

それから15分くらいはこの状況を受け入れ、気持ちよく立っていたのですが、ふつふつと湧き上がってくる予約席への執念。やっぱり予約してるのに席に座れないっておかしくないか?私がここに立っているということは、誰かが私の席に座っているということ。私の払った追加料金で、払ってない誰かが得をするなんて、いくらドイツルールとはいえ私は受け入れられない!小さい人間だと思われてもいい、不躾なアジア人だと思われても構わない、私は私の道を行く!!

抑えきれなくなった思いを胸に、静かに各々の時間を過ごすデッキ同盟の人たちの合間を「Excuse me!」と言って強引にスーツケースを押して客席を目指しました。しかし、デッキ内は人と荷物で隙間なく埋まっており、どうにもこうにも進みません。さっき微笑みかけてくれた女の子が「そんなことしても無理だって...観念しなって...」と言いたげな冷たい視線を向けています。客室まであと数歩だというのに...諦めるしかないのか...と降参モードになったとき、客室のドアが開き、身長2メートル・体重100キロはあろうかという大きな男性が3歳くらいの男の子を抱えて出て来ました。その親子はどうやらトイレに行くために出てきたようですが、この大きなお父さんが通るためにみんなが無理やり荷物を抱えたり避けたりした結果、ぎっちぎちだったデッキに細い道ができました。お父さん、あなたはモーゼですか!このチャンス、逃すまい!と、親子が通ったあとにスーツケースを滑り込ませ、消えかけそうな道をなんとか通過して念願の客室に到着しました。デッキのみんな、やればできるじゃんか。だったら私のためにも道を作ってくれたらよかったのに!と少し憤慨しましたが、まあ、もう私は同盟を抜けたので恨みっこなしです。

それから、客室の通路に立っている人を避けながら進んでいくと、私の予約した席がありました。案の定、ビジネスマン風のおじさんが座っていて、ずっと電話で話をしています。首根っこ掴んで引きずり下ろしたい気持ちをなんとか堪えて、窓の横に掲示されている席番号と手元の予約内容を再度照らし合わせ、間違いないことを確信すると、電話に夢中で私が横に立っていることすら気づかない彼の肩を軽く叩き、水戸黄門の格さんのごとく予約票を見せつけながら「すみません、ここ私の席なんですが(キリッ」と言いました。

f:id:sugar0809:20160602171512j:plain

男性はすぐに立ち上がりましたが、私と目を合わせることもなく、通路で電話を続けています。すみませんの一つもないんかい!と心の中で激おこ。私の前に座っている若い男性は、電話をしている男性の部下のようで「ボス、ここに座ってください」的なことを言って立ち上がろうとしましたが、ボスは手で遮っていました。だから私に謝罪しろ、ボスよ!

席に腰を下ろすと、やっと安住の地にたどり着いた安心感と同時に、あのままデッキにいても良かったかもなと思い始めました。出会いは一期一会。初めての国で知らない人たちと列車のデッキで一緒に時間を過ごすなんて、一人旅ならではの経験です。貴重なチャンスを逃したことを少し悔やみました。

そんな安堵と後悔の間でゆらゆらしながら、ふと、デッキで会話した青年が客室に入ってこないことを疑問に思いました。彼も席を予約しているなら、私が無理やり通ったモーゼの細道を見逃さないはず。おかしいな、と思いながらデッキに繋がる自動ドアをなんとなく見つめていると、恐ろしい仮説が頭に浮かんできました。彼は、私の英語を聞き間違えたのではないか、と。おそらく、いや確実に、私が言った「I booked a seat」が「I want to sit」に聞こえたんだ、と。そりゃあ「me too」って答えるよね、座りたいし!でもって周りの人たちも私にはモーゼしてくれないよね、私は席ない同盟に認定されてるし!お互い英語が第二外国語だと聞き間違いはよくあることだけど、そこだけは伝わっていて欲しかった...。そしたら、もっと早くみんながモーゼしてくれて席につけたかもしれないのに...!

この重大な大間違いに気づいた瞬間から、これまでの20分間がひどく無駄に思えてきました。そして止めどなく溢れ出てくる負の感情。なにが同盟だ。なにが支え合う精神だ。全部ただの私の妄想じゃん!予約してても混んでたら立つなんて、そんな意味不明なルールあるわけないじゃん!発想が飛躍しすぎる自分の思考回路も難ありだけど。一瞬でもデッキにいれば良かったと思った自分が不憫でなりません。

それから列車が駅に着く度に、デッキにいた人たちが客室に入ってきて各々空いた席に座っていました。このときは、私の乗った車両は予約席のみだと思っていたので、みんな誰かの予約席に座るなんて信じられない!といちいちムカッとしました。しかも、あの青年は優先席に座っています。てめー!アラサーの乙女心を弄びやがってー!私の20分返せ!と心の中で叫びました。

結局、私の感情を反映したような大荒れの天気の影響で、列車は1時間以上遅れてミュンスターに到着しました。車掌さんのアナウンスが全てドイツ語だったので、アナウンスの度に前に座っていたお姉さんに「今なんて言いました?」「次はミュンスターですか?」と質問攻め。毎度親切に答えてくれたお姉さんに感謝して席を立つと、列車の窓越しに先生が見えました。先生には事前に私が予約した席の情報を伝えていたので、私が乗っている車両の前で待っていてくれたようです。手を振ると、私に気づいて手を振り返してくれる先生。仏様のようでした。

それからホームで久しぶりの再会を喜び、とりあえずホテルにチェックイン。これから2泊するHotel Kaiserhofです。駅近でとても綺麗。ただ、ダブルベッドを予約したのに予想外のシングル2個つなぎでした。あと、バスタブはなくシャワーだけです。ドイツは良いホテルでもシャワーだけが多いと聞いていたので、さほど驚きませんでしたが、いざシャワーブースのみのバスルームを目の当たりにするとお風呂に浸かりたくなりました。特にこんな日は。

f:id:sugar0809:20160914142119j:plain

それから、先生お勧めのレストランへ連れて行ってもらいました。下戸のくせして飲まずにはいられなくて、でも銘柄とか何もわからないので全て先生にお任せしました。流暢にドイツ語でオーダーする先生。しばらくして出てきたのはもこもこの泡!確かベルギーのビールだったと思います。朝から色々あって疲れた体に染み渡りました。

f:id:sugar0809:20160914142130j:plain

食事も先生お勧めの品をオーダー。仔牛のディープフライwithマッシュルーム&チーズとホームメイドのポテトです。温かいってだけで幸せなのに、グルメな先生のお墨付きとあって味も最高。さらに誰かと一緒に食べることで美味しさが増し、最後の晩餐にしても良いと思えるほど満足でした。

f:id:sugar0809:20160914142135j:plain

華金の店内は満員御礼。外は極寒なのに(だから?)、すごく賑わっていました。

f:id:sugar0809:20160914142138j:plain

食事中、パリからミュンスターに着くまでの珍道中を先生に話しました。自分の予約席におじさんが座っていたことに文句を垂れる私に、「日本のように予約席と自由席が分かれてないですからね。予約席であっても、予約区間以外だったら誰でも座れるし、窓横の予約内容を確認せずに空いてたら座っちゃう人も多いんですよ。もちろん、予約してる人が来たらどかなきゃいけないですけどね」と落ち着いて説明してくれる先生。列車の遅れも日常茶飯事なようで、2日後の長距離移動に少し不安を感じました。

レストランを出ると、さらに気温が下がっていて耳も鼻ももげそうなほど寒い!先生にお礼を言って別れ、早歩きでホテルに向かいました。

f:id:sugar0809:20160914142125j:plain

 

翌日はミュンスター市内観光です。